「三匹のおっさん」有川浩

３人の還暦親父たちが活躍する地域限定「正義の味方」。
痛快時代劇ノリの短編連作集。
　　　

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還暦を迎えた剣道師範のキヨ。
「じいさん」と呼ばれることを否定し、仲間と世直しの活動を始める。
柔道の猛者であるシゲ。工学の知識を活用し、秘密兵器を使うノリが賛同。

第一話はキヨの再就職先で、アミューズメントパーク。
ここでは孫の祐希がバイトしていた。
（高校生は、深夜のバイトはいけないんだよ）
売り上げを狙う輩を、３人が成敗する。

第二話は、痴漢を撃退すべく奮闘するおっさんたち。
しかも魔の手はノリの娘、早苗に及ぶ。怒りのノリ、電撃が冴える。

第三話は「初恋詐欺」。
これもターゲットになったのがシゲの妻である登美子。

高校生の早苗が登美子を責める気持ちはよく理解できる。
まっすぐな若者は不潔なことを許せなくなるもんだ。
その早苗を諭す祐希はまるでおっさん。

シゲ夫婦は同じ墓に入るのが決まった。
ところで夫婦で行った温泉、楽しかったかな？

第四話は動物虐待。
危機管理のくだりは多くの人が疑問に感じているはず。
少年たちを警察に突き出さなくていいのか。「知らない大人」を拒絶していいのか。

ここでも盗聴器の発見など、００７ばりの活躍を見せるノリ。
当初は「戦力」にカウントされなかった。実は有能で、指揮官でもある。
ただし、娘のこととなる冷静さを失う。

第五話ではスカウト詐欺に引っかかった潤子を救う。
怪しいスカウトは、日本各地にいるんだろうなあ。
このエピソードで祐希と早苗がより親密に・・・

第六話は老人をターゲットにした悪徳商法。
話を聞いてくれる相手が欲しかったというくだりは本当にそうだと思う。
孤独な老人が、こうした商法に引っかかる。

振り込め詐欺や、こうした悪徳商法対策には住民を啓蒙するしかない。
公民館などを活用して、地域や自治体はもっと動くべき。

イラストは有川がファンだという須藤真澄が担当。
「エレクトリカルパレード発動１秒前」は笑った。

実はこのシリーズ、主人公は祐希じゃないの？
いつの日か、正義の味方をキヨから継承するんだろうか。

こうした痛快話が読者に受け入れられるのは、社会がいたるところで間違っているから。
素直に喜んでいいものか。

すでに続編が出ている。
　　　

三匹のおっさん　ふたたび　有川浩 著/文藝春秋 価格：1,680円（税込、送料別）

図書館で予約待ちが多いので、読むのはかなり後になるだろう。

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