この作品は、生死を真正面から見つめた秀作。
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主人公は、人の死を悼む旅を続けている坂築静人。
夫殺しの女、人間性を失いつつある週刊誌のライター。
そして静人にとって最大の理解者である母は、末期がんで余命宣告されている。
直木賞受賞作ということを除いても、この作品のテーマはとても重い。
「永遠の仔」もそうだったが、読んでいてため息の連続だった。
人は忘れるようにできている。静人はその流れに逆行する旅で何を見たのか。
静人は、風車に向かう狂った騎士か。それとも人間性を取り戻すべく活動する聖者か。
この作品で、ひとつはっきりしたことがある。
それは、「靖国神社に代わる無宗教の追悼施設」なるものが存在し得ないこと。
静人は旅先で、何度も宗教との関係を問われる。
死を悼むことそのものが宗教。そう考えれば「無宗教の追悼」なんて絵に描いた餅。
新聞記事などで、事件や事故で亡くなった人のことを我々は知る。
しかしその情報は断片的でしかない。
旅先で出会った医師から、ネットで話題になっていることを知る静人。
実家に戻るかと思えば、悼む旅を続行する。
文学とは、人の存在と人生について表現するもの。
そう考えれば、この作品はまさしく文学している。
文庫本も出ているが、舟越桂の作品と赤い表紙が印象的なハードカバーを薦める。
しかも、表紙の写真は天童が撮影したものだという。
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