2012年01月31日

「死者の奢り・飼育」大江健三郎

大江健三郎の芥川賞受賞作、「飼育」を読んだ。
私はとても不安になった。
   
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私が読んだのは新潮文庫。
以下の短編が収録されている。

「死者の奢り」

文学部の学生が、医学部で遺体の安置所のアルバイトに応募する。
遺体を別のプールに移動させるという内容。

安置所の管理人、そして女子学生とともにこの作業を行う。
ところがだいぶ経過してから作業自体が無駄だったことがわかる。

「他人の足」

脊椎カリエスの入院病棟が舞台。
19歳以下の患者が集められた病棟の閉鎖性。

そして閉鎖された状況だからこそ感じる幸福感。
大江くらい頭のいい人になると、暗いことしか思い浮かばないものなんだろうか。

「飼育」

敵国の軍人が、墜落する飛行機から落下傘で降りてきた。
田舎の村では、黒人兵士の処遇をめぐって非日常の世界が始まった。

「人間の羊」

バスの中にいた西洋の軍人。
日本人乗客たちに対して屈辱的な事件を起こす。

被害者である主人公が教師風の男に警察へ訴えるよう言う。
主人公と教師の関係が私を不安にさせた。

「不意の唖」

敗戦後、村に米兵がやってきた。
彼らは暑さをしのぎ、休養するために立ち寄った。

だが水浴びしている間に、日本人通訳の靴がなくなってしまう。
苛立つ通訳は住民に靴を見つけるよう求める。

部落の代表はそんな通訳に対して協力的ではない。
そして靴一足のために人が死ぬ。
残酷な結末に向かって進む内容には、読者としてとても凹んだ。

「戦いの今日」

朝鮮戦争で、半島に送られる米兵にビラを配る兄弟。
社会運動に熱心ではなかった兄弟だが、憲兵の目を気にしつつ配布する。

だが、思いがけず米兵が脱走を志願してきた。
兄弟はその兵士を下宿に匿う。これもかなり残酷な内容。


新潮文庫での解説は江藤淳。
「人間の羊」での主人公と教師の関係について触れている。

原爆被害者と反核運動家に重ねているところが興味深い。
私は米軍基地が多く残る沖縄県民と本土の差を想像した。


私は本を熱心に読む人間ではない。
今になって大江の作品をはじめて読むこと自体、その証明になっている。

では、学生時代この作品を読むべきだったと後悔するか。
私はまったく悔やまない。

なぜなら、その人がある作品を出会うか否かは縁でしかない。
しかも、一生の間に人が読める本の数は限られている。

今、大江の作品を読むのが私の運命だった。
ただそれだけのことだ。


いい文学作品とは何だろう。
その要素はいくつかあるが、私は以下の3つを重要視している。

1、時間の流れに耐える作品であること。
2、感情移入できること
3、読み返す意味が記憶として残ること


この3点から言えば、まさにこの短編集は名作。
古くても今ある問題に対しての目線でも通用する。

「人間の羊」「戦いの今日」など、主人公たちのその後を想像してしまう。
しかもまた読む意味を十分に感じる。

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『死者の奢り・飼育』読了

大江健三郎 「死者の奢り」「飼育」 ――― 第39回(昭和33年)芥川賞受賞作品

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