歴史と神話、そして宗教について書かれている。
主人公は子爵の家に生まれた秀麿。
大学で歴史を学び、海外留学の後に日本の歴史について論文を書く。
ところが彼には気になることがある。
日本史における神話をどうするかという問題だ。
今よりも天皇制が重い時代。
歴史から神話を取り除くと危険思想になってしまう。
面従腹背という手段もある。
しかしそれでは歴史を勉強してきたことに対する裏切りになる。
秀麿はいろいろ考え悩む。
作品でも出てくるが、数学でいう線には面積がない。
だが、実際の線には面積がある。
そうでなければ目には見えないはず。
数学で出てくる虚数解iもそうだ。
2乗するとマイナス1になる数字などこの世に存在しない。
だが、数学でこの虚数解iがないと不便なこともある。
では、神話は歴史なのか?
この問題は、現代にも通じている。
一時期話題となった新しい歴史教科書をつくる会が作成した教科書。
歴史に神話を取り入れている。
この件は以下のページに詳しく出ている。
神話と歴史
この作品では神話と歴史だけでなく、宗教や進化論の話も出てくる。
キリスト教のある一派は、進化論を否定したがっている。
そのため、学校教育の場で進化論を教えることを嫌う。
進化論を信じていない人が多いのもこうした背景が大きく影響している。
以下のページはそのことを証明している。
キリスト教原理主義がはびこる米国―進化論を理解する人間はたったの35%―
宗教が出てきたところでもうひとつ。
聖書に書かれていることは、果たしてすべて正しいか?
「正しい!」と主張する人を私は信用できない。
この件は以下のページにも書いた。
天国はどこ?キリスト教を疑う
地動説を否定したいキリスト教は、天文学者を迫害した。
今でも「人類は誕生してまだ1万年しか経ってない」という人がいる。
聖書は百科事典ではない。
その存在に意味はあるものの、原理主義的に内容を肯定するのは間違っている。
森の時代から現在に至るまで、この問題は解決していない。
しかもすぐに解決するとは思えない。
この作品がすごいのは、「不敬罪」になってもおかしくない内容。
森は右翼から攻撃されたりしなかったのだろうか?
※この話はいくらでも続けられる。
機会があれば、また記事にしたい。
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関連記事
かのようにの哲学〜Philosophie des "Als ob"
↑天皇制との関連など、この作品について詳しく書いている。
参考になる記事。
森鴎外「かのように」『阿部一族・舞姫』(新潮文庫、2003年71刷)
↑この作品について述べている。
当時の皇国史観から、「神話を歴史から除外することは社会を動揺させる」とのこと。
小泉純一郎が物事を単純化することをについて書いているのは興味深い。
鴎外「かのように」
↑私も「博士の愛した数式」は読んだ。
そう、あの博士も線に面積があると認めていた。
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