2011年08月07日

「ボックス!」百田尚樹

高校のボクシング競技を描いた「ボックス!」を読んだ。
09年本屋大賞5位だが、順位以上に評価は高い。
   
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パターンとしては、いじめられっ子がボクシングを始める「はじめの一歩」。
高校生がインターハイを目指すという点では「一緒の風になれ」を思い出す。

後半の試合部分は種目こそ違うが、「風が強く吹いている」をイメージした。
もちろん曽我部は「あしたのジョー」の丹下段平だ(笑)。

この作品は分厚いが、話自体は簡単。
私は2日で読んだ。

主人公の木樽優紀は高校1年生。中学ではいじめられていた。
高校では優等生で、成績優秀で学費免除。
父親がいない中で家計を助けていた。

そんな優紀の幼なじみが同じ高校に通う鏑矢義平。
勉強はできないがボクシングの才能には恵まれていた。

病弱なマネージャー、丸野の死は小説として反則だ。
ボクシング会場に彼女の遺影が持ち込まれる。
この展開で多くの人が泣いただろう。私のその一人。

どうせ反則技を使うなら、丸野の危篤を描くべきだった。
ボクシング部を辞めたカブが病院に駆けつけるが、丸野の死に目に会えないとか。
丸野が死ぬ間際に、「鏑矢君は私の夢だった」と話しかけるとか。

それと、敵役の稲村をもっと描写してもよかった。
家族に勝利を誓うとか、逆に憎らしい一面があったりとか。


英語教師でボクシング部の顧問となった耀子。
彼女もまた、主人公の一人と言える。

耀子と木樽の視点で話は進む。
マイナースポーツであるアマチュアボクシング。

その世界を耀子が質問し、理解することで読者に対する説明にもなっている。
この点は、「説明」と「描写」が難しいところだ。

話の中に出てくる、「才能と鉱脈」は、多くの分野で見られる。
実に多くの才能が、開花することなく葬られている現実がある。

高校を卒業した木樽と鏑矢が、その後どうしたか。
この描き方も「風が強く吹いている」を私は思い出した。

この作品が高く評価される意味。
それは私にもよく理解できる。

以前、後楽園ホールに何度か新人王決定戦を見に行ったことがあった。
スポーツは、マイナーな競技でも自分が知らない人間ドラマがあって面白い。

文句があるとすれば、誤変換など間違いが多い。
著者もそうだが、編集者が何とか気がつくべき。

もうひとつは文章の稚拙なところ。
せっかくの長編なのだから、洗練された文章がもっと必要だ。
読んでいてもったいないと感じた。


百田尚樹といえば「永遠の0」。
今でも図書館では予約待ちの状態。いつかは読めるだろう。

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posted by りゅうちゃんミストラル at 07:44| 東京 ☁| Comment(2) | TrackBack(5) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。トラバありがとうございました。
二部構成にしたのは、面白かったと思いますが、仰るとおり文がこなれておらず、いたずらに長くなっている印象も受けました。
物語は面白かったので「錨を上げよ」を読んでみたら、上巻で挫折^^;そのため、読みたかった「永遠の0」二手を出すのを躊躇している次第です…。
トラバのお返し、させて下さいね。
Posted by 金平糖 at 2011年08月09日 08:39
金平糖さん、こんにちは。
コメントありがとうございました。

「素人っぽい文章」というのは私は結構好きです。
でもこの作品はもう少し何とかならなかったかと考えます。

トラックバックですが、コメントと同じタイミングで表示しました。

今後ともよろしくお願いします。
Posted by りゅうちゃん(管理人) at 2011年08月09日 18:09
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