2011年07月27日

「深い河」遠藤周作

「深い河」を読んだ。
これはインドを舞台にした日本人旅行者たちの話。
   
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なぜ日本人たちは、インドを旅しようと思ったのか。
作者の遠藤はツアー参加者たちにスポットを当てる。

最初に出てくるのが磯辺。
彼の妻は末期ガンでこの世を去る。

死ぬ前、夫に言ったのは彼女が生まれ変わること。
その生まれ変わりを探すよう、夫に頼む。

この入院生活でボランティアをしていたのが成瀬。
大学時代から、自分が何を求めているのか分からずにいる。

自分とは違ったお坊ちゃんの夫とは、すぐに離婚。
カトリック系の大学にいた時、大津という不器用な学生と知り合う。

母親の影響で、洗礼を受けた大津。
成瀬によって誘惑される。

沼田は童話作家。
彼の作品には動物たちが登場する。

木口は太平洋戦争でビルマに行く。
無謀な作戦で戦友たちが次々と倒れる。

彼自身もマラリアに罹り、戦友の塚田に助けられる。
だが復員した塚田は戦友の肉を食べたことで苦しめられる。

酒におぼれて血を吐き、病院で死ぬ。
インドで木口は塚田の死を弔うべくツアーに参加する。

まず、この作品だけでなく作者の遠藤がカトリック信者であるという点。
このことを抜きにこの作品は語れない。

不器用な信者、大津は遠藤のもうひとつの姿。
そう考えるのは私だけではないはず。

キリスト教に限らず、多くの場合宗教は排他的。
大津のように面従腹背という方法を選択できない信者。

時に宗教はそうした場合にとても厳しく、救済どころか人を追い詰める。
その様子は「ゲルマニウムの夜」(花村萬月)で描かれたとおり。

カトリックは教会内での聖職者による性的虐待。
そして人工妊娠中絶をめぐる殺人など、キリスト教をめぐる闇は深い。
この闇については、以下のペー人も書いた。

天国はどこ?キリスト教を疑う

繰り返し書く。
宗教というのは、本来人を救済するものであるはず。

しかし実際はそうなっていない。
本来、宗教が率先して行うべき「寛容」が失われているためだ。

ミュージカル映画の名作、「サウンドオブミュージック」。
この作品に出てくる修道院長(ペギー・ウッド)は寛容を見せた。

だからこそマリアを大佐の元に送り返した。
もし多くの宗教指導者がこのような寛容さを持ち合わせているのであれば。
宗教による悲劇は多くが防げるだろう。

私がもし大津であれば。
口頭試問で問題発言はしない。

試験というものは多くが受かるために存在している。
だから自分の納得できない内容でも試験に受かるための回答をする。

だが、普通に考えれば面従腹背が必要な宗教こそ間違っている。
寛容さのない宗教は迷惑でしかない。

キリスト教が多くの人を救った。
今もなお救っているという事実はもちろん私も認める。
それはとても偉大なことだ。

だからこそ、寛容さのない部分での悲劇がより深いコントラストとして見える。
それは「残念」という言葉では表現しきれないものがある。


まったく理解できないのが三條の行動。
バラナシーで人が燃やされるのを撮影し、そのために大津が瀕死の重傷を負う。

にもかかわらず、その後空港行きのバスが来ないことに苛立つ。
大津の死を予感させる負傷は三條に原因がある。

普通の人ならその事件に責任を感じるものだ。
そこまで不感症なのか。

今後、玉ねぎを見たらこの作品やキリスト教を思い出すだろう。
石焼芋の声が聞こえても、思い出すかもしれない。

次に遠藤周作の作品を読むとしたら。
「沈黙」か「海と毒薬」になるだろうか。

追記

作品に登場するインディラ・ガンディーの暗殺は91年のこと。

この時、ピーター・ユスティノフのインタビューを受けつつ歩いていたという。
作品ではユスティノフが控室にいたということになっている。

私が「深い河」と同時に読んでいるのが「複数の時計」。
アガサ・クリスティーの古典的ミステリー。

この作品で登場するのがエルキュール・ポアロ。
フランス人と間違われることの多いベルギーの探偵。

ピーター・ユスティノフはポアロ役で知られている。
これは偶然だろうか。

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関連記事

遠藤周作「深い河」(長文)

↑この作品について、「宗教多元論」を語っている。
興味深い内容。

遠藤周作著  『深い河』  

↑この作品について、登場人物など解説したページ。

遠藤周作「深い河」

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