2011年07月22日

「アジアンタムブルー」大崎善生

「アジアンタムブルー」を読んだ。
この作品は「パイロットフィッシュ」と対になっている。
   
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主人公は「パイロットフィッシュ」と同じ山崎。
「パイロットフィッシュ」で40歳だったが、この作品では33歳。

葉子という水溜りばかり撮影する恋人と出会う山崎。
彼女は地方に撮影で出かけた際、激しい腹痛に見舞われる。

末期ガンだった。余命一ヶ月。
残り少ない時間を、二人は撮影旅行をしたニースで過ごすと決めた。

葉子を失った山崎が、過去を思い出すことで話は進む。
中学生時代の万引き事件。

そして高校時代の先輩との経験とその後の事件。
カットバックを多用しつつ葉子の最期が明らかになってくる。

人が死ねば悲しい。
それは多くの人がそう感じる。

「東京タワー」(リリー・フランキー)。
そして「その日のまえに」(重松清)がそうであったかのように。

上記の2作品が深い感動を呼んだ。
それだけに、私はこの作品で感情移入が深くできなかった。

作品に出てくる「Your Song」。
有名な曲なので知っている人は多いはず。動画を紹介しておく。



作者の大崎は、村上春樹が好みの作家だという。
この作品にも、春樹に影響を受けた部分が多く見られる。

春樹の小説は多くの場合、「喪失と再生」が描かれている。
この作品もそうだ。
もう中川宏美と再会できないと予感する場面なんてまさに春樹そのもの。

忘れられないのがマネージャーの早乙女。
プロ根性(!)を見せる場面では笑ってしまった。


疑問をいくつか。

山崎に万引きをそそのかした笠井が医師として葉子を診る。
その偶然はどうなのか、私には疑問に感じた。

作家は多くの場合、フィクションを読者に提供している。
つまり「事実か否か」ではなく、「架空の話を実際のように見せる」ということ。

偶然が重なりすぎると読者は離れる。
なぜ作者は笠井を医師として再登場させたのだろう。
私には理解できない。

最大の謎は山崎と論説委員の会話。
委員はこう言っている。

「今はわからないことは考えないでしょう。時間とエネルギーの無駄になることがわかっているから。結論のないことを考えたりしないそれでいいんじゃないかな。我々は哲学者でもチェスプレイヤーでもないんだから」
(太字部分、ハードカバー244ページより引用)

↑私はこの考えには賛同できない。

大人になっても多くの人は死が怖い。
人は、結論のないことを考える生き物だ。

それが無駄と言われることでも。
ついでに言えば、人は誰もが哲学者。

吉祥寺のデパート屋上で宏美と出会うのもすごい確率。
ただ、特殊なオーラが出ている人同士は引き合うのかもしれない。

編集者の山崎がニースでスムーズに会話ができるのも不思議。
ご都合主義ではないのか。

この作品は06年に映画化された。
山崎役は阿部寛だそうだ。

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◎◎「アジアンタムブルー」 大崎善生 角川書店 1500円 2002/9

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↑映画評。

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