この第三部でついに完結する。
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3年生となった新二は陸上部の部長としてインターハイ予選に臨む。
砂浜での過酷な練習の結果もあって、新二は11秒を切るランナーに成長した。
有望な新入生鍵山が加入して、4継(4×100メートルリレー)は期待が持てる。
だが、その鍵山は連と同じ箇所を肉離れしてしまう。
メンバーの入れ替えと同時に、鍵山の性格が陸上部での悩みの種。
泣けたのは、女子の3000メートルを応援する新二と部員たち。
結果が出なくて悩む谷口に、可能性があると中長距離転向を勧めた新二。
県大会へ進めた谷口は、新二に抱きつく。
陸上は何も素質に恵まれた者たちだけのものではない。
結果が出なくても地道に努力してきた、谷口のような部員もいる。
その部員を必死で応援する気持ちには打たれた。
もう一箇所泣けたのは、県大会でのマイルリレー。
流すということができない新二は、1日4レースに全力でぶつかる。
その結果、アンカーだったマイルリレーで力尽きる。
限界まで走った新二を誰も責めることなどできない。
メンバーをはじめ、三輪先生(みっちゃん)もそろって泣く。
ずばり、第三部のMVPは、根岸。
彼の存在は大きい。
走るのは個人だけどチームとしてのつながりを、根岸は作った。
レースもそうだが、高校時代の仲間を新二は死ぬまで忘れないだろう。
そして山場は100メートルとリレー。
多くの読者はメンバーとともにトラックを走った。
今までの努力が結実した瞬間だった。
「結局、本番のインターハイは?」という疑問を持つ読者もいたに違いない。
3冊にも及ぶ長い小説なのに、南関東大会の200メートルさえ結果が出ていない。
だが私はこう考える。
「戦いは予選こそが面白い」
サッカーでもワールドカップ予選は本大会以上の緊張感がある。
「負けたら終わり」の戦いは、多くの人を痺れさせる。
97年、あのジョホールでの戦いに多くの日本人が泣いた。
まだ見たことのない世界を自分たちで切り開くフロンフィア精神。
それは陸上だけではなく、多くの競技に共通する。
何より、希望のある終わり方というのがいい。
事故はあったものの、主人公たちは誰も死なない。
ただ走って結果を出すだけ。競技は単純だが深いドラマがあった。
本屋大賞は当然の結果だ。
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