2011年05月26日

「風が強く吹いている」三浦しをん

駅伝の世界を描いた「風が強く吹いている」。
読んでいるうちに何度も泣いた、素晴らしい小説だ。
   
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この作品、以前から評判だったがなかなか読めなかった。
読み終わった今は、この作品を読まずに死ななくてよかった。
素直にそう感じる。

抜群のセンスを持ちながら、高校で陸上に挫折した蔵原走。
万引きの後、逃走中に声をかけられる。
それが清瀬灰二(ハイジ)だった。ハイジもケガにより陸上を挫折した過去がある。

この2人を中心に、無名の寛政大学が箱根駅伝出場を目指す。
しかもそのメンバー10人はほとんどが陸上経験なし。

話としては、「青が散る」(宮本輝)に近いものがある。
テニスと駅伝の違いこそあるが。

最初の銭湯の場面は、正直リアリティーがなかった。
熱い湯を張った銭湯では、水で温度を下げることが罪のような感覚。
これは、作者が銭湯での「男の世界」を知らないからに違いない。

ところがその先は、約500ページと厚い小説ながら飽きがこない。
走のツッコミで笑うこともなく、何度となく涙が出た。

「こんなのあるわけない」と思う人がいたなら、それは仕方ない。
だが、その人はどこで感動するのか。

しかも上武大などの新興勢力の活躍は、本作品に近い世界。
本作品の設定を、安易にバカにはできない。

昭和記念公園を舞台にした予選会の激闘。
10人目に吐きながらゴールした王子。
寛政大は下位ながらも箱根への切符を手にする。

結果発表までの緊張感とインカレポイントの意味。
留学生の存在をどう考えるか。メンバー登録での各大学の戦略。

ランナーの孤独と襷の継続。
この作品を読んだら、予選会や正月の中継も一味違った楽しみ方になる。

箱根での戦いは苦しみの連続。
1区で王子がビリになるが、2区でムサがやや盛り返す。

風邪で体調不良の神童は5区。
復路繰り上げスタートが決まりながらもゴールにたどり着く。
「リタイアはしないだろ」と思いながらも読んでいてハラハラした。

6区は司法試験合格のユキ。
山下りの途中で、母親と年齢の離れた妹。

そして母親の再婚相手が声援を送る。それに気がついてびっくり。
駅伝は、どのランナーにもドラマがある。
10人のランナーそれぞれを描く作家の力量に感心する。

ニコチャンとキングがつないでエースの走が9区。
優勝候補である六道大学主将、藤岡が作ったばかりの区間記録を更新する。

だが、それでも寛政大学のシード権獲得には届かない。
残りの10区で右足に爆弾を抱えたハイジが懸命の力走を見せる。

そして感動の大手町でのゴール。
何かと因縁のあった東体大に2秒勝ってシード権獲得。

このシーンを電車に乗りながら読んでいたら。
周りの目に関係なく大泣きしてしまっただろう。

「なぜ走るか」という問い。
この答えを出すため、今日も多くのランナーが箱根目指して走っている。

何度も書く。
この作品を読まずに死ななくてよかった。
そのくらい感動した。

追記

以前、日本代表と早稲田ラグビー部の監督だった大西鐡之祐の本を読んだ。
体格で劣るチームを、どうやって勝たせるか。
指導者はそのためにいろんな作戦を考える。

フルバックをライン参加させる「カンペイ」。
スクラムでの不利を補うダイレクトフッキング。ショートラインアウトなど。

伝統に勝つ「新しいやり方」は不可能ではない。
そういえば大西も理論家なのに「ホラ吹き」と呼ばれたことが何度もあった。
ハイジもその意味で監督向きの性格かもしれない。

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