2015年02月10日

「13階段」高野和明

死刑が確定した事件で、冤罪を証明できるのか。傷害致死事件で仮出獄した男が挑む。
約10年ぶりに再読。ネタばれあり。

 

樹原亮は、保護司夫妻を殺害した罪で死刑判決を受ける。
しかし事件直後、彼はバイク事故により数時間の記憶を失ったままだった。
断片的な階段の記憶はあるものの、現場付近に階段はない。

刑の確定から7年が経過し、再審請求も却下された。
死刑執行が迫る。

傷害致死事件で 懲役2年の判決が出た三上純一。
仮出獄した彼は、刑務官の南郷から仕事を持ちかけられる。
樹原の無実を証明するという内容だった。

報酬は1ヶ月で100万円。それを3ヶ月。
無罪を証明できたら成功報酬として1000万円もらえる。

純一の家族は7000万円という賠償金の支払いに追われていた。
南郷と調査することになった純一。

南郷は高卒で刑務官になった。今まで2回、死刑執行を経験。
死刑へのトラウマが、妻との別居につながっている。

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高野にとって初めての長編で、乱歩賞受賞作。
中身の濃さに感心した。多くの読者が夢中になるのも納得。

死刑執行の実際や、不明確な恩赦の実態。裁判は何のためにあるのか。
6ヶ月以内の執行が法律で定められているものの、実際は守られていない。

獄中での請願作業が賃金の安さで知られているのは知っていた。
それにしても時給32円、月に5000円というのは安すぎる。

死刑執行には3つのボタンが使われる。
誰がボタンを押したのか分からないような配慮からだ。

ミステリー小説としての構成も見事。
冒頭、死刑執行の「お迎え」シーンが描かれている。

終わり近くにも、この場面が再現される。
読者はその意味を知っている。

指紋に関する点は、やや説明不足か。
腕時計やネクタイに関する記述は事実なのだろう。

以下の記述が印象に残る。

日本人はな、悪人を死刑にしようと心の中では思いながら、それを口にする人間を白い目で見るんだ。本音と建前を使い分ける民族の陰湿さだよ。
(文庫P184より引用)

法務省事務次官は「まるで死神だ」と考えた。
(同じくP244)

そういえば、ある法務大臣が次々と死刑執行命令書にサインしたことがあった。
とある新聞がその行為を「死に神」と称したことがあったのを思い出す。

私が読んだのは、講談社文庫。解説は、宮部みゆき。
乱歩賞の選考委員だった彼女。
選考が、ほぼ満票だったことを述べている。

選考委員たちは、記憶喪失の被告人に死刑判決を出すか否かについても話し合った。
これは、「半落ち」(横山秀夫)が直木賞落選した際のような騒動を避けるためだ。

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posted by りゅうちゃんミストラル at 16:09| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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