2015年01月11日

「掏摸」中村文則

芥川賞作家がスリの世界を描くクライムノベル。
中村作品は「「土の中の子供」」「「世界の果て」」以来。大江健三郎賞受賞作。

 
 ↑世界最高のスリ師、アポロ・ロビンスの講演をTEDから

主人公は見事な腕を持つスリの「僕」。
本名が西村ということは、後にわかる。

老人(後に国会議員ということがわかる)宅で金と書類を奪うという仕事。
これを木崎という男から依頼された。

西村は凄腕のスリ、石川とともにこの件に参加した。
しかし石川はその後、殺される。

しばらく東京を離れていた西村。
戻ってくると、木崎に監視されていた。

木崎から3つの仕事をするよう命じられる西村。
1、ある男の携帯電話を6日以内に盗む
2、別の男のライターと髪の毛を7日以内に盗む
3、半沢という男の書類を盗む

石川を殺された過去から、反発したい石川。
しかし期限以内に終えなければ今度は西村を殺すという。

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最初に「クライムノベル」と書いたが、スリの世界は背景でしかない。
もちろん描かれているのは人間。

なので、人間ドラマとして仕上がっている。
例えば西村の仕事ぶりを興味深く見ている少年と、万引きを強要していた母親。
佐江子という亡くなった女性のことが思い出として出てくる。

作品に何度も出てくる「塔」。
主人公は作者の投影であり、中村自身が塔をイメージするとあとがきにある。
この塔の持つ意味が作品を解釈するカギになる。

スリが描かれた小説といえば、「天切り松」(浅田次郎)を思い出す。
だが、あの世界が人情話なのに対し、本書は暗い。
この暗さは中村の特徴でもある。

この作品、英訳されロサンゼルス・タイムズ文学賞ミステリ部門の候補作に選ばれた。
(英語タイトルは「The Thief」)
中村は日本より海外のほうが評価される作家になりつつある?

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posted by りゅうちゃんミストラル at 16:30| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする