北海道にあるラブホテルを舞台にした連作短編集。
冷たい視線で性愛を見つめている。直木賞受賞作。
「シャッターチャンス」
美幸は短大を出て13年のスーパー事務員。
3年前に同僚となった貴史は、花形アイスホッケー選手だったが、ヒザの故障で引退。
廃墟となったホテルローヤルで、ヌード写真を捕らせてほしいと美幸に頼む。
ヌード写真と言うだけで、ドン引きでしょ。
しかも撮影のため、ダイエットまでする美幸が信じられない。
女性読者はどう感じたのか。
「本日開店」
主人公の幹子は30にして20歳年上の僧侶と結婚した。
夫は不能で、しかも身体を檀家に「奉仕」させるという。
男に騙されるなど、幸薄い美紀子。
これも私には信じられない世界。
「えっち屋」
ローヤルが廃業する。大吉社長の娘、雅代には行く所がない。
アダルトグッズを処理するため、宮川という英業マンが来る。
「バブルバス」
お盆の法要に、住職は来なかった。
寺のスケジュール管理ミス。
住職に払うはずの5000円で、ラブホテルに行こうという恵。
夫もその気になる。
「せんせぇ」
単身赴任の数学教師が主人公。
彼の妻は20年前から不倫していた。
しかも、その相手は仲人の校長。
赴任先から連絡せず、家に戻ろうと列車に乗る。
すると、出来の悪い教え子がついて来た。
「星を見ていた」
ミコは60歳。3人の子は家を出ていた。
10歳年下の夫は山奥の家にいて働かない。二人は今でも性生活があった。
ローヤルで掃除のパートをしていた彼女。
職場の仲間は48歳の和歌子。
るり子に使われる二人。
ミコの次男から手紙と現金3万円が送られてきた。
子どものうち、連絡があるのはこの次男だけ。
しかし、この次男がトランク詰め殺人の容疑者として逮捕された。
左官の弟子というのはウソだったのか。
「ギフト」
ローヤル建設前の話。
看板屋の大吉には、るり子という愛人がいた。
団子屋の店員だった彼女は妊娠した。
大吉社長は、ローヤル建設を決断。青木建設やリース会社と契約。
しかし奥さんは息子を連れて家を出た。離婚届が残されていた。
義父は大吉社長に対して「反吐が出そう」と言い、足蹴にした。
妊娠したるり子に初物のミカンを6000円で買う社長。
そのミカンには「ローヤル」の文字があった。
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どのエピソードもどこか悲しい。
それがこの作家の特徴なのだろう。
ホテルローヤルは釧路に実在。
15歳のときに父親が釧路町に「ホテルローヤル」というラブホテルを開業し、部屋の掃除などで家業を手伝っていたという経験が性愛への冷めた視点を形成したという。(
Wikipedia桜木紫乃のページより引用)
この暗さは
「土の中の子供」や
「世界の果て」の作者、中村文則に通じるものがある。
文学の目的は、「人間とは何か」「生きるとはどんなことか」。
だとしたら、こうした暗い作品もまた文学の一部。
しかし、こうした作品を読むのは気持ちがいいものではない。
***********************関連記事『ホテルローヤル』桜木紫乃ネタバレ「ホテルローヤル」感想 桜木 紫乃 ****************************トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。
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posted by りゅうちゃんミストラル at 16:31| 東京 ☀|
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