2014年12月10日

「トム・ゴードンに恋した少女」スティーヴン・キング

森の中で道に迷った9歳の少女。
サバイバルの結末はどうなるのか。

 

主人公はボストンレッドソックスファンのトリシア。
両親は1年前に離婚した。

母と兄の3人で暮らしているが、兄は引越ししたのが気にくわない。
PCオタクで新しい学校にはコンピュータクラブが無い。
いつも母親と喧嘩ばかりしている。

週末恒例の小旅行でハイキングに出かけた3人。
しかしここでも母と兄は喧嘩。トリシアは二人とはぐれてしまう。
9歳のサバイバルが始まった。

まず悩まされたのは蚊と蜂。
斜面から滑り落ち、体中にケガもする。

捜索隊はトリシアが最後に確認された場所を中心に活動していた。
しかし本人は40キロ離れた場所にいた。
そしてメイン州を出て隣のニューハンプシャー州に入る。

体調を崩し、嘔吐と下痢に悩まされる。
生水を飲むことはかなりのリスク。
その反面、ベリーやドングリを食べて復活もする。

**** ***** **** *****

ラジオという外界と結ぶ細い糸があった。
しかし彼女は孤独。
友達のペプシやゴードンのことを主に思い出す。

登場人物の少ない物語は作家としての力量が求められる。
そう考えれば、この作品はストーリーテラーとしてのキングが一流であることを証明した。

しかも、結末について決めずに書き進めた。
この点は村上春樹も同じだとインタビューで語っていた。

作品は野球の試合と同じく1回から始まっている。
7回にはセブンスイニングストレッチもある。

トリシアに話しかけるのは、もうひとりの自分。
そしてゴードンも会話する。

ラジオで試合中継を聞くトリシア。
自分とゴードンを結ぶこの細い線が彼女にとっての命綱。

トム・ゴードンはボストン・レッドソックスのリリーフ・ピッチャー。
ということは、時代によっては上原がこのタイトルになる可能性もあったわけだ。

この作品、もし道に迷ったのが二人だったらどうなったのか。
ひとりは死ぬことになったのかもしれない。

読者は自分勝手なもの。実際の作品をあれこれ変えてしまう。
それが読者としての特権でもある。

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posted by りゅうちゃんミストラル at 16:17| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする