彼らは日本にとって重要な情報を抱えていた。
「ベルリン飛行指令」、「エトロフ発緊急電」に続く第二次大戦三部作。
今度も文句なしの力作。
物語は1944年に始まる。
ストックホルムに駐在する武官の大和田大佐。
重要な情報を得て日本へ打電するが、日本側は彼の情報を信用しない。
パリでは森四郎という博打打ちがドイツの秘密警察から取調べを受けていた。
そして東京では海軍省の文官、山脇が終戦工作に駆り出されていた。
以前の二作品に出てきた東京憲兵隊の秋庭保と磯田。
ゼロ戦に乗ってドイツに渡った安藤や妹の真理子などがそのまま登場。
四郎とコワルスキはアメリカの原爆開発成功。
そしてドイツ降伏後、3ヶ月でのソ連参戦という情報を持って旅立つ。
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前の作品でも同じことを書いたが、読者は歴史を知っている。
となれば、作者には「どう描くか」という力量が求められる。
文庫155ページに太平洋戦争のことを「大儀なき戦争」とある。
天皇の退位にも言及している。
右傾化した読者からの批判はなかったのか。
大和田市郎のモデルは小野寺信。
夫人のモデルは小野寺百合子。
ユダヤ人に対し「命のビザ」を出した杉原千畝。
声楽家田中路子も登場。
避妊手術を条件としたデ・コーヴァとの結婚については事実だそうだ。
カティンの森事件も出てくる。
歴史認識が曖昧な私にとってこの作品はいいテキストにもなっている。
上巻では大和田と相川の乗った車が事故を起こす場面で終わる。
ベルンに向かった四郎とコワルスキはどうなるのか。
というわけで下巻に続く。
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ラベル:ストックホルムの密使 佐々木譲