自衛隊の紹介と言うより、人間ドラマとして読んで損のない一冊。
28歳の時、交通事故でパイロット資格を失った空井二尉。
ブルーインパルスへの内示を受けていながらの挫折。六本木の広報室に異動する。
広報室にテレビ局の女性ディレクター、稲葉リカが来る。
彼女は警察担当記者から異動してきた。
自衛隊に理解はない。そのため質問にも情け容赦がない。
「戦闘機って人殺しの機会でしょう」というリカの発言にキレる空井。
鷺坂室長に「俺らの信条は専守防衛だからな」と言われる。
戦闘機が多くの人を殺せる平気なのは間違いのないこと。
だとしたら、「撃たない誇り」を強調すべきではないのか。
読んでいてそう感じた。
柚木三佐はオヤジの入った「残念な美人」。
槙三佐は防衛大、剣道部の後輩。
女性であるということで損をするのはどこの世界でもあること。
円形脱毛症になるほど悩むのは、人材の損失でもある。
片山と比嘉の関係も自衛隊以外に多くある。
こうした人間関係は「県庁おもてなし課」より描けている。
脇役の存在感が増すことで、作品の厚みは増す。
CMの件はあまりに酷い話。これじゃ自衛官が人ではないみたい。
自衛隊を毛嫌いしている人って多いんだなあ。
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「あの日の松島」は、東日本大震災と自衛隊を描いている。
誰かが危険な場合、自衛隊は活動する。
当たり前だが、自衛官も血の通った人間で家族がいる。
このことは「右傾化」とか言わずに素直に読みたい。
私はこの作品を読んだ後でも自衛隊には大きな疑問がある。
法律上も不安定な立場であることは確か。
実際の広報室がその疑問にどう答えるか。期待したい。
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