私は素直に感動した作品。
主人公は帝都大学病院で研修医の夕紀。
ローテーションで今は心臓血管外科にいる。
彼女が医師を目指したのは、父健介が大動脈瘤で亡くなったため。
教授の西園は、かつて父の手術を執刀したその人だった。
そして、母親は西園との結婚を考えていた。
真瀬望は21歳の看護師。
恋人でエンジニアの譲治から、手術室の中を見せてほしいと頼まれる。
譲治はある計画を持っていた。
ある日、病院に脅迫状が届く。
果たしてこの病院に医療ミスはあったのか。
警視庁はスタンドプレーの目立つ七尾刑事を派遣した。
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期待はしていなかったが、これほどまで感動できる作品とは思わなかった。
こんなことならもっと前に読んでおくべきだった。
父親の健介は何故警察を辞めたのか。
その父の死に西園はどう関わっていたのか。
譲治が島原を恨む場面は、「乱反射」(貫井徳郎)を思い出した。
人はどこで誰に憎まれるかわからないものだ。
確かに夕紀中心に物語が進む展開はご都合主義。
しかし、その部分を差し引いたとしてもよくできた作品に仕上がっている。
VIP患者島原の手術では、チーム一丸となって患者を守ろうとする。
その姿に私は打たれた。
照明が落ちれば看護師たちが懐中電灯を持って集まる。
冷やす必要があれば,氷や保冷財で冷やす。
逆に暖める場合はカイロを買ってきて使う。
以下の記述が記憶に深く残る。
「医師とは無力な存在なのだ。神ではないのだ。人間の命をコントロールすることなどできない。
できるのは自分の持っている能力をすべてぶつけることだけだ」
(ハードカバーP362−363より引用)
新たな分野に挑戦し続ける作家、東野。
今後も彼の描く物語を楽しみにしている。
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