この作家の作品は「ふがいない僕は空を見た」以来。
「ソラナックスルボックス」
半人前デザイナーの由人は仕事が忙しく、恋人のミカに捨てられた。
先輩に言われて医師の診察を受ける。うつとの診断で薬の世話になる。
勤務している会社は経営が傾いていた。
社長の野乃花に怒られ、由人も限界に達していた。
練炭を持って自殺しようとしていた社長と由人はクジラを見に行くことに。
「表現型の可塑性」
今度は野乃花の物語。
海辺で育った彼女は、絵が得意だった。
漁師の父と缶詰工場で働く心臓が弱い母。
高校教師の紹介で、絵画教室に通うことになった。
講師の吉則と体の関係になり、妊娠。
結婚したが娘を出産した後、家を飛び出す。
このエピソードで気になったのは135ページ。
経理の畠が「別れた奥さんが」と言う場面。
自分の元妻のことを「奥さん」と言うのだろうか。
「妻」や「女房」ではないのか。細かいことのようだが気になった。
「ソーダアイスの夏休み」
正子は母の過干渉という環境で育った。
姉がいたものの、赤ん坊の時急死した。
父の仕事上の都合で引越しが多かった彼女の家。
高校でバンドを組もうと海老原に誘われた正子。
海老原の姉、忍と出会う。忍は骨のガンだった。
二人と仲良く慣れたにもかかわらず、忍は死亡。
正子は拒食症の上、引きこもりとなる。
久しぶりに家を出た彼女は、由人と野乃花の車に乗る。
両親の知らぬままクジラを見に行く。
「迷いクジラのいる夕景」
クジラが迷い込んだのは、野乃花が住んでいた地域だった。
正子は野乃花の娘ということにして、出会ったおばあさんの家に滞在する。
そこへ正子の両親がやって来て・・・
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小説というのは何なのだろう。
単なる娯楽か、それとも役に立つ存在なのか。
「自殺予備軍」の方々がこの作品を読んだら。
少しは救いになるのか、それともならないのかが気になる。
由人と正子は自己主張ができないことから精神を病む。
言いたがりも困るが、言えない人の重圧は相当なもの。
母との関係もこの作品での重要なポイントだ。
病気は家族がもたらすことも多い。
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